…修理の話…

ぬりものは修理ができるとよく言いますが、何でもかんでも修理できる訳ではありません。素地がしっかりして、きちんと下地をしていて、直し賃と言いますか料金の問題もあります。時間はかかるし修理のランクみたいなものまであります。自分で仕上げたモノは、それなりにどんな仕事をしたか解るからいいのですけれど、他の人の仕事は、非常に難しいものです。塗り立ての仕事は、塗り直しでいいのですが、研ぎ出しの仕事はそうはいきません。我が家にもいろいろと修理のものが持ち込まれます。割合多いのは、どこでできたか解らない塗り立てのものです。多分戦前か戦後すぐの頃のものだと思います。お椀は、下地をしていないもので木地は細い丸太をそのまま挽いたものとか、お膳は、下地に新聞紙を貼っていたりするモノなどです。木のものだから、昔のものだからとかいいものだと思っている人達が多いのです。そして”漆は修理できる”と聞いていると言います。こんな時の断り方は大変面倒です。
三十年くらい前、川連の人達が見学にきたことがありました。 そしていろいろ話をしていたとき、”津軽塗は、三世代につっかてもらえるように作っている。”という話を誰かがしたら、”川連は、一年使ってもらえればいい。毎年新しいモノを買ってくれるとありがたい。”こんな意見が出てもうビックリでした。その時の川連のお椀は千円しなかったと思います。その時はまだぬりものイコール手間暇がかかって値段が高いモノという思いでしたから、そんな仕事もあるのだとは思いも寄りませんでした。直して使うと言うことを念頭に置いていないぬりものも今では、ありかなと少しは思いますが・・・
やはり、私の仕事は、修理できるものを基本としていきたいと思っています。それでもお椀の割れがはいっているようなのは、直しがききません。たとえ直したとしても叉クラックが入ります。 というようにぬりものは何でも直せるものではないということです。