…布着せの話…

布着せ

 指物の木地は、下地をするのがあたりまえだと思っています。しかし世の中には、下地をしていない指物のぬりものがたくさんあります。それらは、ただしまっておくだけでも何年かすると接ぎ目が離れて使いものにならなくなります。コクソをきちんとして、木固めをし、布着せをします。布着せをすることによって、布と木地の段差を埋めなければならなくなりますし、布目を埋めるために下地が必要になります。つまり布着せをすることで下地の手抜きができなくなるのです。

 

 布着せは、産地によっても違うと思いますが、弘前では指物の場合は、半着せといって二回以上に分けて布着せをします。木地の接ぎ目に布着せをしたときの折り返しがつけないようにするのが基本です。写真の状態を見れば解ると思いますが、四隅に折り返しをつけないで真ん中についています。これによって少しは、木地の補強にもなっていると思われます。

それよりも大事なことは、布の扱い方だと思います。縦糸横糸の見分け方とか、どのくらいの厚みのものを使うか、どこにどのように着せるかというように言葉で言っても文字情報でもうまく伝わらないように思います。人の仕事を見て、経験をすることによって身に付いていくものだと思っています。弘前はその点、津軽塗の修理に来たモノを見ればどんな仕事をしているか、参考になるものが多いので勉強になります。

 前に津軽塗の仕事をしている人のところへ行ったとき、布着せの仕事をしていました。仕事を見ていると布がよじれてうまく着せることができないので、その布を見てみると横糸で布つもり(布の成形を津軽塗ではこういいます。)をしていました。それでは、仕事の能率も布着せの効果もかなり怪しことになります。叉、お椀を半着せで仕事をしている人もおりました。ひきものの布着せは、一回で着せるのが基本です。弘前でも基本的なことがあやし状態になってきているみたいです。